目次
1.経営分析のストーリーをロジックで補い解説
2.売上、費用、利益の構造をとらえ、利益の視点からみる
3.費用を変動費と固定費(人件費)とその他の固定費の視点からみる
4.売上を客数と客単価の視点からみる
前回の、
「経営分析できてますか?②~経営指標を読む~」
で、4つの指標の関係性をストーリーで捉える
とお伝えしました。
前回のストーリーは、途中のロジックを省いて
簡略化したものなので、今回は4つの指標が
どのように関係してストーリー化されているのか
を解説します。
例は、定員18名のデイサービスです。
「うちは10%の(税引き前)営業利益を確保したい。
今、1日の平均利用者が13人だから少し厳しいかな。
あと一人増やして14人にすれば利益は確保できるし、
15人にすれば、目標の営業利益を確保できるな。」
上記のストーリーを1行づつ分割し、指標を用いた
ロジックで補っていきます。
1.ロジックで補う
ストーリー | ロジックで補う |
うちは、10%の(税引き前)営業利益を確保したい | 平均要介護度は2だから、 うちは利用者ひとりあたり1日平均、9,100円の売上だな。 (保険報酬+おやつ代=9,000円+100円) 毎日、満員の18名利用だとすると、月平均の稼働日が22日だから 月間売上は、 9,100円×18名×22日=360万3,600円の売上か。 うちの従業員は7名で、 月間の総人件費が180万円。 経費は、変動費、人件費(固定費)、その他の固定費 で分けて見る。 1割の利益を見越した上で 人件費率(人件費総額÷売上)は6割以下を目安にしたいので、 経費比率=変動費:人件費:その他の固定費 =1:6:2 =30万:180万:60万 つまり月間経費の合計は270万だな。 損益分岐点売上高は、売上-経費=0だから 10%の利益が必要なら、 売上ー経費=売上×0.1 売上=Xとすると 必要売上高は、 X-270万=0.1X 0.9X=270万 より X=300万円 となると、 300万(必要売上高)÷360万3,600円(最高売上高) =0.8325 稼働率は、8割以上必要ってことか、、、 |
今、1日の平均利用者が13人だから、少し厳しいかな | 1日の平均利用者数が13人なら、 13÷18=0.7222 360万3600円×0.7222=260万2,519円<270万(経費) 赤字だな |
あと一人増やして14人にすれば、利益は確保できるし | 1日の平均利用者数が14人なら、 14÷18=0.7777 360万3600円×0.7777=280万2,519円>270万(経費) 10万2,519円の利益か。でも目標には足りないな、、、 |
15人にすれば、目標の営業利益を確保できるな | 1日の平均利用者数が15人なら、 15÷18=0.8333 360万3600円×0.8333=300万2,879円>270万(経費) 必要売上高は、300万円だから達成だね! 利益も30万2,879円だから営業利益率も10%超え! |
2.利益の視点
前回、ご紹介した図ですが、利益を出すには
2つの方法に集約されます。
- 売上を増やす
- その他の固定費を減らす
3.費用の視点
まず、費用には3つの捉え方があります。
①あまり効果がなく削減の優先度は低いもの
②削減してはいけないもの
③無駄がでないように注意し、削減すべきもの
①変動費とは、売上に連動して増えるもので、食材費などが主なものです。
食材費を削減することは、
利用者さんの楽しみである食事の質を下げることになるため、難しいですし、優先度も低いです。
②人件費は、介護事業所における強みが「ヒト」にあるため、
そこを削減することは、サービス全体の質の低下につながります。
また、給与を下げると、採用時にも他社との比較で応募が少なくなる懸念もあります。
とにかく、ここは削減してはいけない費用項目です。
③残るは、その他の固定費です。
デイサービスの経営はコストバランスからいえば、変動費<固定費です。
固定費の比重が高いということは、損益分岐点比率は相対的に高くなります。
損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高÷売上高です。
上記の事例で言えば、270万÷360万3,600円=0.7492
約75%です。
つまり稼働率75%を下回ると赤字です。
損益分岐点比率は高いほど、
売上低下による赤字リスクが高まります。
デイサービスのビジネスモデルは来客数の上限があり、
売上に上限があるので、赤字リスクを減らすには
「その他の固定費」をなるべく抑えておく必要があります。
目安としては、人件費の3分の1には収めたいです。
項目は「通信費」「水道光熱費」
「車両・リース等の機器類」に無駄がないかチェックをし、削減すべきです。
「家賃」も負担割合は大きいですが、
すでに借りている場合はオーナーとの交渉を検討しましょう。
売上最高値の5%、もしくは利用定員×1万円が目安です。
ただ外観・内観の心地よさを売りにしているところも
あるので一概にはいえません。
4.売上の視点
売上は客数×客単価です。
「客数について」
客数の総枠は、18名×22日=396枠です
平均要介護度が2なら、週の平均利用回数を3回とし、
396÷3=132名です
10%の営業利益を確保できる稼働率が8割超えなので、
132名×0.8=105.6名
名目利用者数として106名以上の顧客を集める必要があります。
その上で、実質利用者数として1日に15名の稼働率を
どのように確保していくのか、を考えることになります。
さらにデイサービスには提供時間帯が選べるので、
回転率も関与します。
ただ、報酬単価だけをみて効率性を重視し、
午前・午後の2回転を選択することが正解ともいいきれないと思います。
提供サービスと利用者ニーズが一致しているかどうかだからです。
「客単価について」
客単価を高める要素は、平均要介護度と加算です。
ここは事業所の方針と大きくかかわってきます。
またお風呂のあるなし、設備の充実度によっても変わってきます。
いずれにせよ、取得可能な加算はとる方向で考えた方が良いです。
そして、利用者の要支援と要介護度の割合が現状どうなっているのか
今後、どのようにしていきたいのかを考察する必要もあります。
なぜなら、要介護度が高い利用者が増えれば、
ひとりあたりの単価が向上するものの、
スタッフにもより高度な介護技術や専門知識が求められ、
研修に対する時間や費用は、より必要になるからです。
人員配置も基準以上が必要になり、人件費が6割を超える可能性があります。
もちろん事業所の方針として取り組んでおり、
それを自社の強みとして利用者やそのご家族、ケアマネさんに訴求できており、
集客につながっているのなら戦略としてアリです。
まとめ
・利用者の平均要介護度で事業所の売上可能総額が予測できる
・人件費率から必要総経費が予測できる
・必要総経費が分かれば、損益分岐点売上高が把握できる
・損益分岐点売上高が分かれば、目標利益率を達成するための目標売上高が把握できる
・売上可能総額と目標売上高の関係から、必要な稼働率が把握できる
・現状分析から、1日あたり何名の利用者を増やす必要があるかを把握できる
次回は、経営者の想いと売上向上=加算と考える
ことがもたらす盲点について述べたいと思います。
「経営分析できてますか?」はこちら
「経営分析できてますか?②~経営指標を読む~」はこちら