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就業規則の書き方によって、従業員の士気を高めることができる、という趣旨が
書いてある本を読んだのですが、それは可能でしょうか。 -
私見ではありますが、従業員の士気を高めることが就業規則の本質的な機能ではないものの、
間接的に可能であると思います。
就業規則の本質的な機能は、以下3つあります。
①労働者の「労働条件」の明示
②職場ルールの明示
③会社の業務命令権の明示①の「労働条件」ですが、労働基準法第1条第1項に、
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むために必要を充たすべきものでなければならない。
同条第2項に、
この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として
労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。とあります。
また、憲法第25条第1項に、
すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
憲法第27条第2項に、
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
とあります。以上より、労働基準法に記載されている労働条件は最低基準を定めたものであると同時に、
最低基準が標準とならないように、引き下げの禁止と向上義務を謳ったものとされています。
ですから、就業規則の本質的機能からして、まずは労働者の生活保障に重点があります。
それらを踏まえたうえで労働条件の一つである賃金で考えてみます。
賃金は基本給と諸手当で構成されています。
そして諸手当の種類・金額等は会社が自由に設定できます。
例えば若者や育児世代に対し、住宅手当や育児関連の手当を厚くすることで
定着促進につながり、長い期間働くことで技能が向上し、やりがいの創出につながる
ということはあり得ると思います。
また、②の「職場ルール」にしても、育児スペースを設置し自由利用を認めるなど、
福利厚生の充実化により同様の効果が見込めるかもしれません。このような取り組みがすべて実行可能とは限りませんが、会社独自のルールや仕組みを定めて周知し
活用を促すことで、この会社は従業員のことをちゃんと考えてくれているのだな、
と伝わります。
そして人を大切にする組織風土が作られ、従業員の士気が高まるということはあり得ると思います。
【参照条文 憲法第25条1項、27条第項 労働基準法第1条1項、2項】