介護事業所にビジネスモデルは必要か?②


介護事業は、経営というより運営に近い形になりやすい。
これは事業特性も大いに関係があります。

売上=客単価×客数

売上を増やすには、客単価を上げることと、客数を増やすことです。
ただ介護事業の場合は、保険であり、単価や運営基準が国により定められているので、
営業努力で売り上げをいくらでも向上できるわけではない。
また、適正に運用されているか行政の実地指導が入る。
これらのことから、経営よりも運営に重きを置きがちになる。では運営と経営の違いは何か?

戦略の有無です。

市場競争の中で生き残り成長していくために、他とどう差別化していくか。
差別化できる競争力の源泉は何で、どう育てていくか。
こういった視点をもって計画的に実践しているかどうかです。

そのためにビジネスモデルが必要になります。
ビジネスモデルは「儲ける仕組み」です。
先に説明したように、この儲けるという観点が介護事業は相対的に高くないので、
ビジネスモデルを考えることに至りにくいと感じます。

ビジネスモデルは3つの要素と+1です。
・顧客
・商品・サービス
・収益
・提供価値

この+1の提供価値がもっとも重要です。
介護事業はサービス業ですから、いかに顧客ニーズを満たすための価値を提供するのか、という視点が不可欠です。
ビジネスモデルは、儲ける仕組み、ですが、その中心は「儲けの源泉をつくる」ことです。
その源泉は「人」です。

利用者さんのニーズを満たすことのできる
「考えられる人材」が源泉です。
つまり、このような人材を育成するツールとしてビジネスモデルが必要になるのです。

ビジネスモデルは3つの経営環境に影響をうけます。
・市場環境
・競争環境
・技術環境

競争環境のひとつに、新規参入の脅威があります。
今、50代以上の中高年を対象にした女性専用フィットネスが流行っています。
この年代はデイサービスでやるようなことは好きではないという感覚をもった方が多いです。
このフィットネスがデイサービス事業を始めたら、そのまま介護認定を受ける前から
顧客を抱え込むことが可能になります。

市場環境からみると、65歳以上で介護認定を受けるのは20%です。
人口構造を考えると、その地域の潜在顧客数が分かります。
学習塾と似ていますが、本格利用する前からいかに顧客を取り込むか、という競争になります。

こういった経営環境を踏まえて、ビジネスモデルの構築と運用を通じた人材育成が必要になるのです。
わたしがケアマネをしていた実感から、大手で資本が大きいから集客に有利とも限らないと思います。
それは、地域に根ざしたビジネスだからです。なので、

専門性×地域密着×こだわり(らしさ)

これらをいかに「見える化」していき、利用者さんとケアマネさんに訴求できるかが、
生き残りと成長を図る上での戦略だと思っています。
そしてそれを体現する「考えられる人材」の育成が、「儲けの源泉をつくる」ことなのです。
だから介護事業所にビジネスモデルは必要なのです。


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