映画音楽から読み解く、組織づくりとリーダーシップ


――ハンス・ジマーの音楽に学ぶ“奏で合う組織”

映画音楽の名匠、ハンス・ジマーのコンサートで気づいたこと

名古屋で開催されたハンス・ジマーのコンサートに参加しました。特に『インセプション』の「Mombasa」が冒頭で演奏された瞬間、ツインドラムの迫力とともに心が大きく揺さぶられました。音楽の構造に耳を澄ますと、彼の音楽は非常に緻密でありながら、感情的な揺らぎやうねりをも感じさせてくれます。

音色、リズム、メロディ、そして空間の間――すべてが多層的に編み込まれており、構造と感性が見事に共存しています。
それはハンスジマーサウンドとして確立されているものなので、彼はある種の天才です。

なぜなら映画音楽は純音楽と違い、まずは映画ありきだからです。その制約の中で自分のブランドマークがついた音楽を創造するのは簡単ではないはずです。手間と戦略がいるはずです。
私が他の作家でパッと思いつくのは、スターウォーズでおなじみのジョンウィリアムズくらいです。

もちろんサウンド的にいえば、他の映画音楽作家も何人かは思い浮かびますが、音楽そのものの魅力を訴求できる、つまりコンサートで集客できるレベルでいえばジョンウィリアムズです。

ステージは“セッション”であり、“組織運営”である

ジマーのコンサートは統合感がありました。ステージには20人以上の演奏者がいましたが、それぞれの音が干渉せず、むしろ全体のうねりとして共鳴していたのです。ステージングや音楽を体感し、彼は組織マネジメントが得意なタイプの音楽家だと思いました。
彼のイメージする音楽を、さらに上のレベルに引き上げる優秀な演奏家を配置していたからです。

ここには、次のような組織づくりのヒントが詰まっています:

  • メンバーの「得意」を活かし、それを“編み込む”場をつくる
  • 管理ではなく、“奏で合い”を支援するチーム設計
  • 全員が主役になれるような、心理的安全性のある組織風土

それは「個性のぶつかり合い」ではなく、「共鳴しあう創造空間」でした。

後日、彼のインタビュー動画を見ました。「音楽は音を出す人によって創られる」という趣旨のことを話していました。
それを聞いて、スコア上だけで完結させるのではなく、個の力を引き出す創造プロセスを重視しており、ハンスジマー自身の役割は引きだした個の力を統合・調和させることなんだな、とコンサートでの印象と合致しました。

人事制度はスコアではなく、セッションである

組織における制度設計も、楽譜づくりと同じです。どれだけ精密に作っても、運用されなければ意味がない。そして、どの人がどのようにその制度を“演奏するか”で、組織の音はまったく違ってくるのです。

だからこそ、人事制度は「作る」よりも「奏でられる」ことを目的としなければいけない。制度の運用段階では、まさに“個としての個性”も含まれる。そこに、支援者である私たちの役割があるのだと思います。

つまり前提として、自社としてどのようなチームをつくりたいのか?それはなぜそうなのか?という部分を共有にした上で、誰のどのような強みを活かしていくのか、を考えることが支援者として大切ということです。
チームビルディングの方法に関してはまた別の機会に書きたいと思いますが、ポイントは職務特性と個人の習熟度の2軸で考えることです。

あなたの組織はどのようなチームをつくりたいですか?どのようにチームビルディングをしていますか?

まとめ:制度に音色を。組織にハーモニーを。

ハンス・ジマーの音楽を通じて、私はあらためて感じました。制度とは設計図であり、演奏されてこそ意味がある。組織はひとつのオーケストラであり、そこでは役割もスキルも違う人々が、共鳴しながら“今の音”をつくっている。

ジマーはミュージシャンたちだけでなく、エンジニアも紹介していました。エンジニアの腕がいかに彼の音楽において重要なのか、と。
そのあたりにも、チームとしての音楽創造プロセスを重視する彼の特性が表れているなと印象に残りました。

そんな素敵なステージを体感し、制度に音色を与え、組織にハーモニーを響かせる組織・人材マネジメントの支援ができる存在でありたいと思いました。


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