採用時に注意すべき事項


せっかく時間とコストをかけて、早々に離職されると企業の損失が大きいですよね。退職する3か月前に申し出ることと就業規則に定めているのに何の意味もないと嘆く経営者も少なくありません。早期離職の要因は「給与」「労働時間」「仕事の内容」など労働条件にかんするものが上位にきます。逆に言えば、これらを事前に労使双方ですり合わせができていれば、早期離職や突然の離職を防止する一助になります。

採用までの流れ

労働契約成立までに、①労働者の募集→②採用試験・面接→③採用の通知→④労働契約書・誓約書などを交わす→⑤勤務開始、のステップを踏みます。労働契約の成立は、採用面接時に採用します、と返事をすればそこで労働契約が成立し、後日採用通知を出す場合は、採用通知をした時点で労働契約が成立します。

求職者を募集する際に注意する事項

募集時に求人情報として示す事項は、①事業所の情報(事業所名・所在地・事業内容等)②労働条件(仕事の内容・労働時間・賃金等)③応募条件(資格や経験など企業が労働者に求める条件)④採用選考方法に関する情報(応募方法・面接日等)です。
募集段階で仕事の内容や賃金の詳細が確定していない場合でも、一定の幅を持たせて明示する必要があります。そして募集時と契約締結時に労働条件が異なる可能性があることを明示しておきましょう。

労働条件がある程度詳細に決まっている場合には、①業務内容②契約期間(期間の定めの有無、定めがある場合はその期間)③試用期間④就業場所⑤始業・終業時刻、所定外労働の有無(残業)、休憩時間、休日⑥賃金⑦募集者の氏名または名称を、最初に求職者に接触する段階で明示します。最初に求職者に接触する段階とは、主には面談の際になります。
賃金に関して、固定残業代を設定している場合は、15時間分の時間外手当として3万円を支給、など、金額と対応する時間を具体的に記載するようにしましょう。

採用選考時における注意事項

雇用主には採用方針や採用基準、採否の決定など「採用の事由」があるものの、求職者の適正・能力のみを基準とした公正な採用選考が望まれます。そのため、以下の事項について面接時に尋ねることは就業差別につながるおそれがあることに留意しましょう。

①本籍・出生地に関すること②家族の病歴や収入、学歴に関すること③自宅の間取り、部屋数、近隣施設などの住宅状況④宗教⑤支持政党⑥労働組合、社会運動に関すること⑦購読新聞、愛読書⑧本人の既往歴、など

⑧の既往歴は、配置の判断にもかかわるため、聞いておきたい点だと思われます。ですが直接既往歴を聞くことはリスクがあります。ですので、職務内容を説明した上で、不安がないか、あるとしたらどのような点か、その際にはどんな配慮があると助かるか、を質問されるとよいと思います。精神に関する病気は応募者も自ら申告しないケースもあり、採用後に問題になるリスクの軽減につながります。

パート社員の採用に関する注意事項

令和6年の4月から、有期雇用労働者(パート社員)に対する労働条件の明示事項に変更があります。令和6年4月以降に、契約更新をする場合には、契約更新の上限があるのかないのかを伝える必要があります。また、更新の上限がある場合には、今回が何回目の更新で、あと何回更新できるのかを明示しておきましょう。また有期雇用労働者は無期転換ルールが適用されます。これは5年を超えると、無期雇用労働者への申し込み権が発生するので、使用者は申し込み権が発生した旨と、転換を行うかどうかの意思確認を行う必要があります。無期雇用労働者に転換されると雇用期間が定年まで伸びますが、その他の労働条件は有期雇用労働者のままという「ただ無期」も社会問題視されているため、有期雇用から無期雇用に転換された際に、どのように労働条件が変わるのかを就業規則に定めておききちんと説明できるようにしておくことが望ましいです。

雇用契約書をとくに正社員と区別していない企業でたまに見受けられますが、パート社員には「昇給の有無」「賞与の有無」「退職手当の有無」「相談窓口」も記載して伝える必要があります。正社員には昇給や賞与があるものの、パート社員にないという場合は、正社員は長期雇用を前提としているからという理由に正当性をもたせるためにも、正社員登用制度を設けておくことが望ましいです。



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