はじめに
クライアント企業に対し、ある程度の期間、組織開発を行ってきました。
まだプロセスの途中ではありますが、ひとつの到達点にきたので、自分の振り返りも含め
組織開発についてお伝えしたいと思います。
内容はクライアント企業とは関係なく、あくまで組織開発とはどういうものか、
どんな視点が大切か、ということについてのまとめです。
例えば、
・就業規則は整備している
・コンプライアンスも意識している
それでも、「部門間の摩擦が減らない」「人が定着しない」
という悩みを抱えている経営者は少なくないと思います。
これは、誰かの能力や意識の問題ではなく、制度だけでは扱えない組織の複合的な課題が表に出てきている状態です。
このような課題に向き合うための考え方と実践が、
組織開発(OD:Organization Development)です。以下ODと表記します。
ODとは「良い組織をつくる」ための取り組みです。
この「良い」とは、組織の目標を達成するために、業務プロセスが改善されたり、
そのためのコミュニケーションがしっかり行われている組織の状態が保たれていることです。
そのためにOD実践者が組織全体の関係性や考え方、行動のパターンに働きかけ、
組織が自ら学び、環境変化に対応し続けられる状態をつくることを目指します。
ODを考える際によく参照されるのが、米国の組織研究者・コンサルタント/ダニエル・キムの「成功循環モデル」です。
このモデルでは、
・関係の質
・思考の質
・行動の質
・結果の質
これらが循環的につながっていると考えます。
結果だけを変えようとしても、うまくいきません。
行動を変え、考え方を見直し、その土台にある関係性に目を向ける。
この循環を意図的につくっていくことが、ODの役割です。
第1セクション|組織の「停滞」を変革の起点に変える
部門間の摩擦や、経営方針が現場まで伝わらない状態は、多くの組織で起こります。
重要なのは、これを「問題」として押さえ込むのではなく、
組織が変わるためのサインとして捉えることです。
すぐに原因を分析し、施策を導入するのではなく、
今、何に違和感があるのか、何がうまくいっていないのか、
このまま進むとマズいのではないか、と危機意識を持つことがODの出発点になります。
第2セクション|対話の前にモヤモヤを「見える化」する
ODを開始する際は、取り組むメンバーを決めます。
しかし、そのメンバー間でいきなり「腹を割って話そう」と言われて、すぐに本音を話せる人は多くありません。
だからこそ、ODでは対話の前に、頭の中のモヤモヤを見える形にすることを重視します。
意見や感じていることを紙に書き起こして可視化し、それを全員で共有する。
そうすることで、
問題は「個人の責任」にするのではなく、
組織全体の課題としてテーブルに乗ります。
このプロセスを経て、安心して発言できる「場づくり」が形成されます。
そして、内省が深まり、より創造的な意見が出やすくなります。
第3セクション|言葉の意味を「自分たち」で再定義する
同じ言葉を使っていても、人によって意味の捉え方は異なります。
たとえば、
・責任
・主体性
・楽しい
といった言葉にも、人それぞれの解釈が生まれます。
ODでは、こうした違いを否定するのではなく、
互いの価値観や考え方を知るための資源として扱います。
必要とあれば、
「仕事」とは「組織」とは、という根源的な問いにまで掘り下げ、対話を重ねることで、
解釈の違いがどこからきているのか、そして違いの奥にある共通の願いや大切にしていることも見えてきます。
このように徐々に言語化しながら、
自分たちの提供価値や存在意義を再定義していきます。
第4セクション|リーダーシップを「機能」として展開する
会社として大切にしたい共通の価値観が見えてきたら、それらを踏まえた「ありたい姿」を描いていきます。
これは、問題の対策を考えて「あるべき姿」と「現状」のギャップをトップダウンで埋めるアプローチとは異なります。
理想の未来を描き、トップダウンでもボトムアップでもなく、皆でつくりあげていくアプローチです。
「ありたい姿」を具現化するためには、現場の行動につなげていくリーダーシップの発揮が必要になります。
でも、リーダーシップを特定の人の才能として捉えてしまうと、自分にはできない、と思ってしまうかもしれません。
そのため、自分がリーダーシップを発揮した経験を振り返ったり、
理論モデルを活用して自分のリーダーシップの特徴を知ることで、
「自分にもできる」という実感が生まれるように働きかけていきます。
リーダーシップは、特定の人の才能ではなく、組織に実装される機能であり、
「ありたい姿」を推進するための組織風土づくりにも重要だという認識を強めてもらう意図があります。
第5セクション|行動変容を「継続的な仕組み」につなげる
ODの成果は、エンゲージメント(仕事への熱意/組織への帰属意識)の向上や
営業利益という「結果の質」での検証も大切だと思います。
企業は利益を上げなければ、雇用を保証できなくなりますし、
ODのために費やした時間や労力に対する定量的な効果も重要だと思います。
厚生労働省の労働経済白書では、エンゲージメントが高いほど、
個人の労働生産性も高いという相関が示されています。
また、エンゲージメントは、上司や同僚との関係性、フィードバック、仕事の意味づけといった
「仕事の資源」によって高まることが、これまでの研究で明らかになっています。
つまり、対話によりエンゲージメントを高め、労働生産性があがることで、財務的な成果がでるといえます。
とはいえ、利益を目指してというより、関係性がよくなり自分たちが主体的に組織を良くしていこうとすることで、
様々な情報共有が円滑にされ、業務改善がなされたり、スキルレベルの向上により顧客満足が高まり、
その結果、財務的な成果がでる、という因果の流れを理解していただくことが重要だと思います。
また、ODによって生まれた行動変容とその結果(業務改善、スキルの向上)は、
最終的に評価や処遇にどう反映されるのかも重要です。
ここが曖昧なままだと、頑張った人ほど報われない状態が生まれ、組織は疲弊してしまうからです。
評価制度や賃金、キャリアパスといった、
納得感のある仕組みに着地させることで、
対話によるエンゲージメントの向上から組織目標の達成への再現性を、高める仕組みにすることが重要だと思います。
まとめ|制度を「意味」に翻訳し、組織を動かすために
制度は、組織を守るために必要なものです。しかし、それだけでは組織は動きません。
一人ひとりの対話を通じて意味が共有され、
エンゲージメントが高まり、行動が変わり、
その変化や成果が評価や処遇に反映され、組織への愛着と貢献意欲が増す。
この循環が回り続けてこそ、組織は自ら動き出していきます。
再度、以下の書籍を読み直して、OD実践者としての振り返りをしました。

