約10年ぶりに北海道の旭山動物園に行きました。
園内は坂道が多いので結構体力を使います。
バリアフリーになっているので、高齢者や小さなお子さんがいても車いすやベビーカーで移動が可能です。
目を引いたのが、スタッフの方々の手書きの説明です。
それぞれの動物の性格や家族の関係性が書いてあり、日ごろからいろんな視点で観察しているのだな、と興味深く感じました。
亡くなった日付や原因まで記載していたので、珍しいなと思いました。
そこで、どんな理念で運営されているのか興味を持ちました。
伝えるのは、命
スタッフの方々の記載で、へ~と思ったのが、農作物への被害についてです。農家さんの育ててているトウモロコシなどを野生の動物が食べに来る背景には、個体数の増大があり、狩りをして個体数を減らす必要があるというのです。
動物と、どのように共存・共栄していくのかを考えさせられました。
単に動物の生態を伝えるだけでなく、社会的な視点も伝えているのは「伝えるのは、命」という理念があるからだと分かりました。
1967年の開園当初から50万人前後だった年間来場者数が、1990年代半ばには20万人まで落ち込み、閉園の危機にも直面しました。
その時に、自分たちの園の在り方とはどういうものか、を現場の皆で考えて「行動展示」という、動物の自然なあり方を伝えていくことが命題だと共有したそうです。
理念の反映
日本で一番集客できる動物園として脚光を集め、2009年は年間来場者数が300万人を超えたそうです。
ここまでの成果をあげると、自分たちの方向性を見失いそうになったのではないか、と推測します。実際はどうだったかは分かりません。
現在の年間来場者数は、旭川市公式サイトによると140万人前後。最盛期からすると落ちた、との見方をされるかもしれませんが、旭山動物園の理念を守りながら経営していくスタイルからすると、このサイズ感が健全であり持続可能な気もします。
スター動物を作ってグッズ化し、収益性を高める動物園もありますが、旭山動物園はその方向性ではないという想いを感じます。
野生動物の絶滅防止プロジェクトの一環として、オリジナルTシャツを制作・販売したり、人間との共存をするための個体数管理として狩った動物の皮を使って製品化する行動も、理念の反映だと感じます。
楽しさと敬意
どの動物もすごく近くで見ることができます。ただ寝ているだけでも間近で見るとすごい迫力があり、生命を感じます。
それは、トラやチーターやクマが心地よくありのままに近い形で生活できる物理的環境を、現場のスタッフが日々観察して積み上げた知見や動物研究の知見を活かして整備しているからでしょう。
キリンは下から見上げる、目線を合わせらる、やや上から見える、と様々な視点から見えるように設計されていたのが印象的でした。
動物園は、どこまでいっても人間が考えたシステムの中で飼育していることにかわりはありません。
だからこそ、行動科学に基づいた動物福祉の視点がなければ、魅力を持ちつつ長く続く動物園にはなれないと思います。
見ることの楽しさと動物への敬意をあらわした魅力的な動物園だなと思いました。