多くの介護事業所は処遇改善加算を取得しています。ご存知の通り、処遇改善加算は高いランク順に(Ⅰ)から(Ⅲ)まであり、
その中でも(Ⅰ)と(Ⅱ)を取得するためには、キャリアパスを作成し、運用していく必要があります。
処遇改善加算(Ⅰ)もしくは(Ⅱ)を取得している事業所は9割を超えているので、ほとんどの事業所にはキャリアパスがあるはずです。
では、どのくらいの事業所がそのキャリアパスを運用しているでしょうか?
どのくらいの従業員が、自分の事業所にどのようなキャリアパスがあるのかを知っているでしょうか?
その前にキャリアパスとは何でしょうか。
この図を見ていただくと、3つの進路があります。1つ目は、介護の仕事を極めて若手の技能を育成するコース。2つ目は、組織をマネジメントしていく統括責任者になるコース。3つ目は、相談員やケアマネなど専門職を極めるコースです。
入職してから退職するまでに、その組織でどのような職歴・経歴を踏んでいくのかを定めたものがキャリアパスです。
処遇改善加算は、従業員の処遇をよくする為でもあり、中長期的な視点で人材を育成していく為でもあります。
横にある数字は等級と言います。経験や能力を高めていくことで、職位が上がり、より難度が高く責任の大きな仕事に従事していきます。
1等級は仕事の基本を覚える段階です。先輩の指導のもと、決められたことをきちんとできるようになっていく段階です。
3等級になれば、自立して業務が行えるだけでなく、業務改善の提案をして職場の生産性を上げることに貢献したり、新人の育成も担えるようになっている段階です。目安として入職5年の経験です。
5年の経験を積むと、従業員個々の個性や能力の違いも見えてきます。
また従業員自身も、自立して仕事ができるようなると、視野も広くなるので、職場における問題点や自分の将来を考えるようになります。
このような場合に、①自分は介護のスキルを磨き現場で後輩の育成・指導にあたる道か、②組織全体をマネジメントしていく道か、③専門職としての知見を深めサービスの質向上に寄与する道か、という明確なキャリアパスがあることで、組織として必要な人材を確保しつつ、従業員にも「ここで働き続ける意義」を見出してもらうことができます。
介護業界は資格と経験があれば転職しやすい業界です。
転職も含めた離職理由の上位には、「職場での将来イメージがもてないから」というのがあります。
せっかく時間と労力をかけ育ってきた人材が離職するのは避けたいですよね?
キャリアパスにもとづいた定期的な面談を通じて、従業員からどのような進路希望や職場での課題をもっているのかを聴きます。
会社側は、その従業員にどのような道に進んでほしいかを伝えます。処遇やその道に進む場合のサポート体制も含めてです。
そうすることで、従業員には「職場での将来イメージ」を明確化してもらうことができ、「ここで働き続ける意義」を見出してもらえ、離職を防止できるのです。
ここに示したキャリアパスは一例ですが、「経営理念を実現するために人と組織をどう成長させていくのか」という観点から、それぞれの事業所がキャリアパスを作成していただければよいと思います。なにより大切なことは、明確なキャリアパスをツールとしてコミュニケーションを促進し、会社と従業員間で、向かっていく方向をしっかり共有していくことではないでしょうか。