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雇用契約書には時給1000円、就業規則には時給960円と記載されています。
どちらが優先されるのでしょうか。 -
職務内容、労働時間や賃金を個別の労働契約で締結している場合は、
就業規則の記載より、雇用契約書の記載が優先されます。
よって時給は1000円です。
就業規則と労働契約の関係を示す条文に労働契約法第7条があります。労働契約法第7条
条文の後半部分で、「労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、
第十二条に該当する場合を除き、この限りでない」とあります。
第十二条とは、就業規則よりさらに低い労働条件をいいます。
就業規則で定めた条件より高い労働条件を個別に定めている部分は、
異なる労働条件を合意していた部分に該当するので、雇用契約書で定めた時給(1000円)になるのです。
ただし、職務内容、労働時間とそれに対応した賃金を雇用契約書に明確に定めないまま、
雇用関係に入った場合は、労働契約法第7条前半部分にあるように、
「合理的な労働条件が定められている就業規則」があり
「就業規則を労働者に周知させていた」なら
就業規則に定めていた労働条件になります。
例えば、就業規則に、
アルバイトの使用期間2週間を設け、
使用期間後に適性をみてA、B、Cの職務配置を行う
A:ホールでの接客 1000円~/時給
B:厨房での調理 970円~/時給
C:厨房での掃除 960円~/時給
というのは、合理的な労働条件であり、
一通りの職務を試した上で、
接客の経験もなく制服のネクタイをしばしば忘れる○○さんが
いきなりホール接客は難しいと判断され、
厨房掃除の時給960円からスタートすることを
就業規則を見せつつ説明していたのであれば、
就業規則の記載が労働条件としての効力を有します。
注意すべき点は、
第7条は「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において」なので、
労働契約が締結された時点で存在している就業規則である必要がある点です。
【参照文献 「労働契約法のあらまし」厚生労働省】
まとめ
・原則、法的拘束力は就業規則>労働契約である
・ただし、就業規則を上回る労働条件を個別の労働契約で締結した場合は労働契約が優先する
・詳細な労働条件を労働契約で定めず就職した場合は、以下2つの要件を満たせば就業規則が労働条件になる
要件①「合理的な労働条件が定められた就業規則が存在すること」
要件②「就業規則を労働者に周知させていたこと」